真珠の世界的権威「Mr. Pearl」に、真珠にまつわるあれこれを教えていただく短期連載「Mr. Pearlの真珠人生」。
2回目の今回は、日本が世界に誇るアコヤパールについてお聞きします。
――真珠にはアコヤ、南洋、淡水など、いくつか種類がありますね。中でもアコヤは、日本を象徴するジュエリーとして有名です。
そうですね。私が長年勤めたミキモトがアコヤパールの養殖に成功して以来、日本のアコヤパールは「とても美しい」と世界的に高く評価されています。
――なぜ、日本のアコヤパールは高く評価されるのでしょうか?
日本の気候、特に四季があるのが美しい真珠が生まれる良い条件になったんだろうと思います。日本の海で育ったアコヤパールは真珠層に厚みがあり、形も色もテリも良い「決め珠」が採取される確率も高いんですよ。確率が高いといっても、圧倒的に数が少なく、とても希少ですが。
――「決め珠」とは?
簡単に言えば、最高品質のパールのこと。大きさ、色、テリ、すべてにおいて文句をつけようがない美しい「決め珠」レベルの珠は、とてつもなく美しいんですよ。
――予算に限りがある(!)私のような消費者は、どのようなアコヤパールを選んだら良いのでしょうか。
大きさ、色、形、テリ……。ご自身の優先順位を決めるのが良いと思います。真珠に限らない話ですが、真珠もルビーやサファイヤのような宝石も、ピンからキリまであり、アクセサリー品質とジュエリー品質のものでは、雲泥の差があります。どちらもあって良いですが、買う側に正しい商品説明はすべきだろうと思います。情報開示の徹底は必要です。そのうえで、ご自身の予算や好みにあったアコヤパールを楽しみながら、選んでいただきたいですね。
――日本以外の産地のアコヤパールにも、何か特徴はありますか?
アコヤパールのポテンシャルをもっとも引き出すのは、やはり日本ですが、中国や小規模ですが、ベトナムでも養殖されています。中国産はそれなりの品質が多かったですが、だんだん良い品質のものも出てきました。ベトナム産は比較的小さなベビーパールに見どころがありますね。それから近年、中東のアブダビがアコヤパールの養殖にチャレンジしています。
――アブダビでアコヤパールですか!?
そう、アブダビ。私も視察に訪れましたが、面白いことに、このアブダビ産が意外に良いんですよ。日本のような四季はないのに、不思議ですねぇ。まだまだ小規模ですし、品質が安定するのか未知数ですが、予算に余裕があるお国柄だからか丁寧に取り組んでいるようで、今後、楽しみですね。
――「アコヤパール=日本」というイメージがあると思いますが、将来、日本のライバルになるかもしれませんね。
私の見立てとしては、やはりアコヤパールのポテンシャルをもっとも引き出すのは、四季がある日本という点は変わりないと思います。ただ、たとえば2014年に日本のアコヤ貝に病気が発生して大打撃を受けた結果、珠不足となり、アコヤパールの価格が高騰しました。近年も、要因は違いますが、アコヤパールの価格の上昇が止まりません。そうした事情を考えると、日本以外でも品質の良いアコヤパールが養殖できるようになったら、消費者の皆様にとっては、良いニュースかもしれませんね。ただ、先ほども申し上げた通り、情報開示をきちんとする、というのは大前提です。
――真珠養殖も時代とともに、変化し続けているのがよくわかりました! 次回もどうぞよろしくお願い申し上げます。